春が近いというのにやけに冷え込む夕暮れだった。
 いや、恐らく気温のせいだけではないのだろう。竹林に囲まれたこの場所はまさに隠者や世捨て人が住むにはうってつけの場所だが、真っ当な人間にとっては寂しさに心を囚われてしまうような場所であった。
 男は仕事の帰りに偶然ここに立ち寄った。そこに特に理由らしい理由はない。ただ、この侘しさのようなものにどことなく惹かれたからだ。まさか、自分が風流なことを考えるとは、などと自嘲したものの、やはりそこをそのまま素通りするのはどことなくもったいないと感じ、遂に来てしまった。
 やはり特に何もないな。それが男の第一印象だった。しかし、辺りを見回すと、それが真理ではないことに気付いた。

 春が近いというのにやけに冷え込む夕暮れだった。
 いや、恐らく気温のせいだけではないのだろう。竹林に囲まれたこの場所はまさに隠者や世捨て人が住むにはうってつけの場所だが、真っ当な人間にとっては寂しさに心を囚われてしまうような場所であった。
 男は仕事の帰りに偶然ここに立ち寄った。そこに特に理由らしい理由はない。ただ、この侘しさのようなものにどことなく惹かれたからだ。まさか、自分が風流なことを考えるとは、などと自嘲したものの、やはりそこをそのまま素通りするのはどことなくもったいないと感じ、遂に来てしまった。
 やはり特に何もないな。それが男の第一印象だった。しかし、辺りを見回すと、それが真理ではないことに気付いた。

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