「だが、話はこれで終わりではない。異形の神はとある場所に流れ着いた。そこで神は世界を慟哭に包み込まんほどに嘆いたという。そうして神は考えた。何故、自分は棄てられたのか? いや、分かっている。自分が棄てられたのは、ひとえに自分が醜悪で、不具の子だったからだ。ならば不出来な形ではなく、完全な形を持って相まみえれば、自分は愛されるかもしれない、いや、きっと愛されるだろう、と。故にその神は自分の欠損した部分を補うために活動を始めた。まずは手始めとして、自分の忌まわしき肉体を捨てた。そうして、その肉塊を使って二つのことをした。一つは自分が受肉するための完璧な器の用意。そしてもう一つは、子の創造。産み落としたのではなく、文字通り造られたその子は、少なくともその神の考えうる限り完璧な容姿、知性を備えていた。その子はとある使命を神から仕り、現世へと降った。だがどうしたことだ。子は現世に来るや、忌み嫌われ、腫れ物を見るような目で見られた。何故なら、その子は完璧であるが故に歪な所が何一つないという異常性を持っていたからだ。要するに気味が悪かった、ということだがそれは神としても、人間の在り方としても間違っていた。子はひたすら耐え続けた。そして僅かばかりの自分を信仰してくれる者達と各地を流れ、子を成し、幽世へと旅立った。使命は子孫へと受け継がれていった。時にエゾやサンカなどと呼ばれた者たちの中に紛れた子孫は、細々としかし絶えることなくその使命を受け継ぎながら今の今まで生きながらえた」
「その末裔が日井、つまりあんたか」
「そういうことだ、天野幸彦。と、ここまで説明すれば私の目的も分かるだろう。それは――」

「だが、話はこれで終わりではない。異形の神はとある場所に流れ着いた。そこで神は世界を慟哭に包み込まんほどに嘆いたという。そうして神は考えた。何故、自分は棄てられたのか? いや、分かっている。自分が棄てられたのは、ひとえに自分が醜悪で、不具の子だったからだ。ならば不出来な形ではなく、完全な形を持って相まみえれば、自分は愛されるかもしれない、いや、きっと愛されるだろう、と。故にその神は自分の欠損した部分を補うために活動を始めた。まずは手始めとして、自分の忌まわしき肉体を捨てた。そうして、その肉塊を使って二つのことをした。一つは自分が受肉するための完璧な器の用意。そしてもう一つは、子の創造。産み落としたのではなく、文字通り造られたその子は、少なくともその神の考えうる限り完璧な容姿、知性を備えていた。その子はとある使命を神から仕り、現世へと降った。だがどうしたことだ。子は現世に来るや、忌み嫌われ、腫れ物を見るような目で見られた。何故なら、その子は完璧であるが故に歪な所が何一つないという異常性を持っていたからだ。要するに気味が悪かった、ということだがそれは神としても、人間の在り方としても間違っていた。子はひたすら耐え続けた。そして僅かばかりの自分を信仰してくれる者達と各地を流れ、子を成し、幽世へと旅立った。使命は子孫へと受け継がれていった。時にエゾやサンカなどと呼ばれた者たちの中に紛れた子孫は、細々としかし絶えることなくその使命を受け継ぎながら今の今まで生きながらえた」
「その末裔が日井、つまりあんたか」
「そういうことだ、天野幸彦。と、ここまで説明すれば私の目的も分かるだろう。それは――」

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