夜明けを伝える鳥の囀りが聞こえてきた。澄んだ空気が辺りを包み込み、体についた淀みのようなものを洗い流してくれる。
「んー、気持ちいい。深夜と早朝はいいね」
 青年は人気のない歩道を歩きながら思わず呟く。彼は精一杯伸びをして空を見上げた。
「週に一、二回くらいは早朝に起きて外を走るようにするのも悪くないかな。よし、検討してみよう」
 青年は人がいないのをいいことにブツブツと呟きながら目的地を目指す。
 青年の名は太一、日本の地方都市である菅原市の大学に通う学生である。彼はふとした出来事から異界の住人に関するあれこれを請け負う客士院の一員となった。それは、しばしばの戸惑いを彼にもたらしたが同時に、書き物を生業としている彼の好奇心を満たすのに十分な体験をもたらすものであった。
 青年の目的地は北宮神社と呼ばれる社である。比較的沿岸部に位置しているこの神社は、高台にあるために境内から海を望むことが出来るが、市内でもその存在を知っているものはそう多くなく、昼間であっても閑散としていることが多かった。
 太はそんな神社の石段を登り、境内に足を踏み入れた。
「あれは」
 太は拝殿の方を見やると、長い黒髪の少女と思しき人影が拝殿に向かって願い事をしているようであった。
「やあ。また会ったね、たまき」

 夜明けを伝える鳥の囀りが聞こえてきた。澄んだ空気が辺りを包み込み、体についた淀みのようなものを洗い流してくれる。
「んー、気持ちいい。深夜と早朝はいいね」
 青年は人気のない歩道を歩きながら思わず呟く。彼は精一杯伸びをして空を見上げた。
「週に一、二回くらいは早朝に起きて外を走るようにするのも悪くないかな。よし、検討してみよう」
 青年は人がいないのをいいことにブツブツと呟きながら目的地を目指す。
 青年の名は太一、日本の地方都市である菅原市の大学に通う学生である。彼はふとした出来事から異界の住人に関するあれこれを請け負う客士院の一員となった。それは、しばしばの戸惑いを彼にもたらしたが同時に、書き物を生業としている彼の好奇心を満たすのに十分な体験をもたらすものであった。
 青年の目的地は北宮神社と呼ばれる社である。比較的沿岸部に位置しているこの神社は、高台にあるために境内から海を望むことが出来るが、市内でもその存在を知っているものはそう多くなく、昼間であっても閑散としていることが多かった。
 太はそんな神社の石段を登り、境内に足を踏み入れた。
「あれは」
 太は拝殿の方を見やると、長い黒髪の少女と思しき人影が拝殿に向かって願い事をしているようであった。
「やあ。また会ったね、たまき」

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