「あの、『真統記』とは一体何なのでしょうか?」
 太は生野と話していた時からずっと疑問に思っていたことをぶつける。祖父が語ってくれた書物。いくらか呪術に関することを知っていたとはいえ、その書物の存在は只の作り話かと思っていた。しかし、それが望月の口から発され、生野もその存在を認めていた。
「その名前が出た途端、生野氏の態度が一変しました。それは、一体何なのでしょうか?」
 あえて、自分が祖父からその書物について聞かされていたことを伏せ、望月に尋ねた。
「ごめんなさい、話してなかったわね。太君、貴方がどこまで知っているかは定かではないけど、この書物は簡単に言ってしまうと禁書の類よ。中には幾千幾万、いえ、多分それ以上の秘術が眠っているとも言われていて、決して有象無象の類の手に渡ってはいけないもの。実は、この神社は編者の一人と少し縁があってね。古い記録に『真統記』に関する記載があるの。その存在自体もごく一部を除いて知られてないのだけれど、迂闊にこの書物のことを口に出してはいけない。それは肝に銘じておいてね」
「は、はい」
 確かに、そんなことを祖父も言っていた気がする。だからこそ、作り話と思いながらもこれまで口には出さないようにしていた。
「で、先日の件で分かった通り、彼らは一人一人が非常に厄介だわ。もしかしたらまだ何か隠しているかもしれないし、下手に戦いを挑むものじゃない。だから、上手いこと一人ずつ袋叩きにしてしまいましょう」
「袋叩き、だって?」
 天野は首を傾げる。
「ええ。趣味じゃないかもしれないけど、今はそれが最善策。少なくとも私は彼らに対しては個別に対処していくべきだという評価をしているけど、貴方はどうかしら?」
「問題ない。別にやり方にこだわりがあるわけでもないしな」
「私も同感です」
 その声に三人が振り返る。弓納が眠そうに目をしばたたかせて、太の後ろから覗き込むようにメモ書きを見ていた。
「口惜しいながら、私も劣勢を強いられました。今回の件はやはり独立独歩では厳しいかと」
「小梅ちゃん、もういいの?」
「はい。バッチリです」
「よし、それじゃあ話に加わってもらいましょう」
「なあ望月。個別に対処するのはいいんだが、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「それについてはもう対策を考えてあるの」
 そう望月が言った時、インターホンが鳴った。
「というわけで丁度来たようね」
「行ってきます」
 太が廊下に出ていく。

「あの、『真統記』とは一体何なのでしょうか?」
 太は生野と話していた時からずっと疑問に思っていたことをぶつける。祖父が語ってくれた書物。いくらか呪術に関することを知っていたとはいえ、その書物の存在は只の作り話かと思っていた。しかし、それが望月の口から発され、生野もその存在を認めていた。
「その名前が出た途端、生野氏の態度が一変しました。それは、一体何なのでしょうか?」
 あえて、自分が祖父からその書物について聞かされていたことを伏せ、望月に尋ねた。
「ごめんなさい、話してなかったわね。太君、貴方がどこまで知っているかは定かではないけど、この書物は簡単に言ってしまうと禁書の類よ。中には幾千幾万、いえ、多分それ以上の秘術が眠っているとも言われていて、決して有象無象の類の手に渡ってはいけないもの。実は、この神社は編者の一人と少し縁があってね。古い記録に『真統記』に関する記載があるの。その存在自体もごく一部を除いて知られてないのだけれど、迂闊にこの書物のことを口に出してはいけない。それは肝に銘じておいてね」
「は、はい」
 確かに、そんなことを祖父も言っていた気がする。だからこそ、作り話と思いながらもこれまで口には出さないようにしていた。
「で、先日の件で分かった通り、彼らは一人一人が非常に厄介だわ。もしかしたらまだ何か隠しているかもしれないし、下手に戦いを挑むものじゃない。だから、上手いこと一人ずつ袋叩きにしてしまいましょう」
「袋叩き、だって?」
 天野は首を傾げる。
「ええ。趣味じゃないかもしれないけど、今はそれが最善策。少なくとも私は彼らに対しては個別に対処していくべきだという評価をしているけど、貴方はどうかしら?」
「問題ない。別にやり方にこだわりがあるわけでもないしな」
「私も同感です」
 その声に三人が振り返る。弓納が眠そうに目をしばたたかせて、太の後ろから覗き込むようにメモ書きを見ていた。
「口惜しいながら、私も劣勢を強いられました。今回の件はやはり独立独歩では厳しいかと」
「小梅ちゃん、もういいの?」
「はい。バッチリです」
「よし、それじゃあ話に加わってもらいましょう」
「なあ望月。個別に対処するのはいいんだが、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「それについてはもう対策を考えてあるの」
 そう望月が言った時、インターホンが鳴った。
「というわけで丁度来たようね」
「行ってきます」
 太が廊下に出ていく。

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