「天野君」
 屋敷内の丘の上にいた望月は、離島から生野邸に戻ってきた天野と弓納を見るなり声をかける。
「日井さんはどうした? いや、その前にどうした、そんなに険しい顔をして」
 望月の顔は緊張感に満ちていた。少なくとも、あまり余裕のある顔ではない、と天野は感じた。
「日井さんは離島の方にいる筈よ。部下が残ってるらしいから、落ち合ってからこっちに来るみたい」
「そうか。大事ないのならまあいい。それで、何でそんなに深刻そうなんだ」
「そんなにキツイ顔してる?」
「少なくとも、いつものお前じゃないな」
「……上手く言えないのだけど、何だか得体のしれない複雑な気配を感じたの」
「嫌な気配、か」
「ええ。これ以上適切な表現は今は思い浮かばないわ。後は、大江御前の居場所に行ってみないとその正体が分からない」
「場所は補足出来たんですか?」
 横で聞いていた弓納が尋ねると、望月は「うん」と頷いた。
「さっき大江御前の強い力を感じた。結構はっきりしたものだったから、居場所はすぐに掴めたわ。多分、移動もしてない」
「ま、得体のしれない何かも気になるが、後は行ってみるしかないか」
「こっちよ」
 望月の先導で、丘から下っていく。
 屋敷を通り過ぎ、庭を横切った所にある建物の前まで来て望月は止まった。
「多分、舞踏会とかに使われる場所。今はもう使ってはいないだろうけど」
「確かここは一般開放されてるところじゃなかったか」
「そうね。今は閉じてるから誰も入れないけど、確かにここから気配を感じた」
 望月は片手に銃を構えて、ドアノブに手をかける。
「鬼が出るか蛇が出るか。楽しみね」
 ドアを開けて中に入った。
「……うそ」
 突然、望月が立ち止まる。後ろを歩いていた天野は望月にぶつかりそうになった。
「おい、急に立ち止まるなよ」
「……天野君、あれ」

「天野君」
 屋敷内の丘の上にいた望月は、離島から生野邸に戻ってきた天野と弓納を見るなり声をかける。
「日井さんはどうした? いや、その前にどうした、そんなに険しい顔をして」
 望月の顔は緊張感に満ちていた。少なくとも、あまり余裕のある顔ではない、と天野は感じた。
「日井さんは離島の方にいる筈よ。部下が残ってるらしいから、落ち合ってからこっちに来るみたい」
「そうか。大事ないのならまあいい。それで、何でそんなに深刻そうなんだ」
「そんなにキツイ顔してる?」
「少なくとも、いつものお前じゃないな」
「……上手く言えないのだけど、何だか得体のしれない複雑な気配を感じたの」
「嫌な気配、か」
「ええ。これ以上適切な表現は今は思い浮かばないわ。後は、大江御前の居場所に行ってみないとその正体が分からない」
「場所は補足出来たんですか?」
 横で聞いていた弓納が尋ねると、望月は「うん」と頷いた。
「さっき大江御前の強い力を感じた。結構はっきりしたものだったから、居場所はすぐに掴めたわ。多分、移動もしてない」
「ま、得体のしれない何かも気になるが、後は行ってみるしかないか」
「こっちよ」
 望月の先導で、丘から下っていく。
 屋敷を通り過ぎ、庭を横切った所にある建物の前まで来て望月は止まった。
「多分、舞踏会とかに使われる場所。今はもう使ってはいないだろうけど」
「確かここは一般開放されてるところじゃなかったか」
「そうね。今は閉じてるから誰も入れないけど、確かにここから気配を感じた」
 望月は片手に銃を構えて、ドアノブに手をかける。
「鬼が出るか蛇が出るか。楽しみね」
 ドアを開けて中に入った。
「……うそ」
 突然、望月が立ち止まる。後ろを歩いていた天野は望月にぶつかりそうになった。
「おい、急に立ち止まるなよ」
「……天野君、あれ」

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