「少しは信じてもらえたかしら?」
 顔にかかった髪を払いながら、少女は言った。
「何故彼を殺したの?」
「物騒な人ね。殺してなんかなくてよ。ちょっと傷は深いけど、致命傷じゃない。彼は気絶してるだけ」
「そう、それは何より。それじゃあ、質問を変えましょう。何故彼と争うことになったの?」
「それは彼がある物を持っていたから」
「そのある物とは?」
「あら、祭宮さん。彼が何を持っているかなんてとっくに知っているんじゃなくて?」
「『真統記』、か」
「ふふ、そういうこと」
「そんなものを手に入れて何をするつもり? 失われた秘術を手に入れても世界征服なんて夢のまた夢よ」
「そんなものに興味はないわ。私の願いは只一つ」
 たまきは踵を返す。
「待ちなさい。まだ話は終わってない」
「機会があったらまた会いましょう。ああそれと」
 たまきは思い出したように振り返る。
「"鍵"を不用心に置いていてはいけませんわ。もっとしっかりと管理しませんと」
「鍵……ですって!?」
 望月が驚いた表情をしたが、たまきは意に介さずに入り口に向かって歩き出した。その体は薄紫の靄を放ちながら徐々に透けていき、やがて消えてしまった。
「く、しまった」
 望月は眉根を寄せて苦々しく呟いた。
「おい、望月。鍵ってのは」
「……太君のことよ」
 望月が苦々しく言い放った。

「少しは信じてもらえたかしら?」
 顔にかかった髪を払いながら、少女は言った。
「何故彼を殺したの?」
「物騒な人ね。殺してなんかなくてよ。ちょっと傷は深いけど、致命傷じゃない。彼は気絶してるだけ」
「そう、それは何より。それじゃあ、質問を変えましょう。何故彼と争うことになったの?」
「それは彼がある物を持っていたから」
「そのある物とは?」
「あら、祭宮さん。彼が何を持っているかなんてとっくに知っているんじゃなくて?」
「『真統記』、か」
「ふふ、そういうこと」
「そんなものを手に入れて何をするつもり? 失われた秘術を手に入れても世界征服なんて夢のまた夢よ」
「そんなものに興味はないわ。私の願いは只一つ」
 たまきは踵を返す。
「待ちなさい。まだ話は終わってない」
「機会があったらまた会いましょう。ああそれと」
 たまきは思い出したように振り返る。
「"鍵"を不用心に置いていてはいけませんわ。もっとしっかりと管理しませんと」
「鍵……ですって!?」
 望月が驚いた表情をしたが、たまきは意に介さずに入り口に向かって歩き出した。その体は薄紫の靄を放ちながら徐々に透けていき、やがて消えてしまった。
「く、しまった」
 望月は眉根を寄せて苦々しく呟いた。
「おい、望月。鍵ってのは」
「……太君のことよ」
 望月が苦々しく言い放った。