鬼姫奇譚 終章:後日にて

 鏡を破壊せずに家に置いておいたのは、とても身勝手な思いからだったのです。
 人でなくなるもっと昔のこと、その時の思い出を繋がりを形に残しておきたかった。
 本当はもっと相応しいものがあったと思うのだけど、こればっかりは不可抗力というものですね。
 だって故郷が焼け落ちちゃった時、最後に結局残ったのはあれだけだったんですから。
 ええ、ですので失いたくなどなかった。
 ですが、そんな子供のようなことは言っていられなかったのです。
 だって、大事な人を、居場所を守らないといけなかったから。