プロローグ 第四章:異様

―― 旧小学校中庭

太「行き当たりばったりで行ってしまうのは悪い癖だ。直さないといつか痛い目に遭いそう。さーてと……ん?」
ふと、夜空を見上げる。
太「ああ、空が綺麗だなー。吸い込まれてしまいそうだ」
?「……ケタ」
太(人の、声?)
しかし、恐ろしく低い。
?「ミ……タ」
太「…………」
ザッ……ザッ……
音が近づいてくる。
太(近くに誰かいるみたいだ。もしかして、例の亡霊が)
太は深呼吸をする。
太(このまま素知らぬフリでペースを早めてなんとか門まで)
ザッ
音が止まる。
太「!?」
太(なんなんだ、これ……!?)
影となって地面に映し出されたそれは、異様な塊をしていた。まるで、自分のその貌を認識させようと迫っているように見える。
太(動物? いや、この大きさでこんなシルエットの動物なんて、あり得ない。これじゃあまるで)
?「ミ…ケ…」
太は得体の知れないそれに耐えきれなくなって振り向いた。
太「ヒエッ!?」

蜘蛛のような形をした、巨大な化け物。しかし頭は、まるで憤怒の形相の鬼面そのものであった。
化物「グオオオオオオオ」
それは、感極まったかのように雄叫びを上げる。
こんなの聞いてない、噂になってたものは人の亡霊だったじゃないか。太は誰にともなく恨み言を投げかけた。
太「逃げない、と」
それの動きが緩慢なのをいいことに、彼は一目散に駆け出す。このスピードなら、追いつかれずに逃げられるかもしれない。どうせこいつは外に出られないのだろう。ならば――
太「!? うそ。校門の方へいけない」
化物「グルルルルル」
唸り声をあげながらそれは少しずつ距離をつめてくる。
太「クッ」
方向を転換した。どこか別の場所から抜け道を探さないと。