鬼姫奇譚 四章:遠い日の思い出

「どういうこと? さっき直進してたよね、私達」
「はい、それは間違いないかと。うーん」
 弓納は顎に手を当てて少し俯く。
「どうしたの?」
「さっき芥川さん。私はここの管理人だー、みたいなことを言ってましたよね。それに彼女は魔術のようなものを使うことが出来る。つまり、彼女はこの空間を色々弄ったり出来るんじゃないかと仮説を立ててみました」
「そんな。もしそれが本当なんだったら、このまま彷徨っててもどうしようもないじゃない」
「元より彼女はそのつもりなのかも。そうすれば外で自分を邪魔する人がいなくなりますから。どうしましょう、いっそ大人しくそこら辺の本でも開いて読書に耽りましょうか」
「冗談じゃないっ! そんなことしてたら餓死するって」
「それもそうですね」
「もう弓納さん、結構呑気ね」
 日夏は呆れたように言うと、弓納は屈託なく笑った。
「いえ、こういうのは割と慣れてるので」
「慣れてるって、貴方普段どんな日常を送っているの」
「それは企業秘密です」
「……まあいいわ。それより、何か策はないの?」
「はい、実はですね。あるんです。出る方法」
「え、あるの?」
「はい。でも、これは中々の悪手というか、強引な方法なのであまりやりたくはないのですが……」
「背に腹は変えられないわよ」
「そうですね。ではこれは不可抗力だということとさせていただきます」
「それで、一体どうするの?」
「とても簡単なことです。これは以前、風変わりな御仁から聞いたことなのですが、まあ見ていてください」
 そう言うと、弓納は近くにあった明かりへと歩を進めた。