プロローグ 第六章：必然
女の子「すみません、遅れてしまいました！」
慌ただしく廊下をやってきた少女。
慌ただしく廊下をやってきた少女。
女の子「弓納、ただいま参上です」
女「お疲れ様、小梅ちゃん。ちなみに全然遅れてないわよ」
女の子「そうですか。よかった。ところで……そちらの男の子は」
弓納と名乗った少女は太の方を見て首をかしげる。
女「そうね。ちょうどそれについて聞こうと思っていたところよ。天野君。早速で悪いのだけど、その子について説明してもらえないかしら」
天野「ああ、分かってるよ。事の次第を一部始終話そう」
女「ええ、よろしく頼むわよ」
―― しばらくして
天野「というわけだ」
女「なるほどね。大体の事情は分かったわ。そういうことなら、こっちの事情を話さないわけにはいかないわね」
天野「おい、いいのか」
女「構わないわよ。どうせこんな話知っても、宴会の余興話にしかならないから。それにもう彼も関わってしまったのだし、このまま忘れろだなんて無茶な話よ」
女性「と、その前に自己紹介くらいはしておきしょうか」
女「では改めて。コホン、私の名前は望月詠子。この神社で祭宮を務めている者よ。よろしくね」
女の子「弓納小梅と申します。現在、学校に通っております。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
太「……太です。よろしくお願いします」
望月「それじゃあ始めるわね。まず私達のことだけど、以前そこの天野君がお務めしていたように、確かに秘密のお仕事をやっているわ。君もこの前遭遇したような物の怪の類を調伏したり、彼らが原因で起きている騒ぎ、異界騒ぎを解決したりするのが仕事よ。で、そんなことをしている私達は"客士"って呼ばれているのだけど、ここはその寄り合い所。"客士院"というわ」
太「へえー。戦隊物みたい」
天野「戦隊物って、君なあ」
望月「ああでも、勘違いしないでね。別に妖異、妖怪とか妖魔とか物の怪とかその他諸々で呼ばれている連中は皆が皆悪さをするならず者じゃないの。人には害のないものも多いし、中には人を助けてくれるような奴だっているわ。いわば害獣と益獣ね」
太「なるほどですね。ちなみにこの仕事って自発的にやっているものですか」
望月「いいえ。依頼主からしっかりお金をもらってやっているわ」
太「依頼主ですか。一体誰が」
天野「国だ」
太「え、国？」
天野「そう意外そうな顔をするな。質の悪い妖怪を放置していると国の秩序が乱れてしまうからな。犯罪者と煩妖は昔から国の悩みの種というわけだ」
望月「主に国からの依頼ってだけで、それだけじゃないのだけどね。個人からの依頼も受けることもあるわ」
天野「もっともこのご時勢、ああいった連中を認識していてわざわざ依頼を出すような人間なんて少数だがな」
太「あの～、話の途中で申し訳ないのですが、"はんよう"ってなんでしょうか？」
望月「"煩妖"っていうのはね、物の怪の中でも、国や社会にとって害をなすような存在のことよ。早い話がお上にとっての害獣みたいなものね」
太「ほへー」
望月「どう？ 大体分かっていただけたかしら。天野君はもったいぶってたかもしれないけれど、特段そんなに変わったことをしているわけじゃないわ」
太「…………」
黙り込む太。何秒かの沈黙の後、望月が口を開く。
望月「ねえ、もしかして"客士院"に興味がある？」
太「え、そ、それはもちろんです！」
望月「そう、じゃあ話が早い」
彼女は何のためらいもなく、その言葉を口にした。
望月「うちに入る気はない？」
太・天野「えっ！？」
二人して素っ頓狂な声を上げる。
望月「冗談よ冗談」
太・天野「なんだ、冗談か」
望月「というのは冗談で」
太・天野「冗談じゃないのか！？」
望月「貴方達息ピッタリね。感心しちゃったわ。お笑い芸人になれそう」
弓納「お笑い芸人……」
望月「実際にお笑い芸人になれるかはともかくとして、ちょうど人手がいなくて困っていたのよね。ああ、もちろん危険なことをさせるつもりはないわ。もしよかったら」
太「やります！ 喜んで！」
望月「うふふ、交渉成立ね」
天野「おいおいおい、望月、正気か？」
望月「あら、私はいつだって正気よ。ねえ、小梅ちゃんはどうかしら？」
弓納「私はさしあたってなんの問題もないです」
望月「だって、天野君。大体、貴方が彼をここに連れてきたのよ。今更渋るなんてないんじゃない」
天野「……全く、なんで俺の周りはこんなにチャレンジ精神豊かな輩が多いんだ」
望月「あら、それって」
天野「分かったよ。元はといえば俺が連れてきたのが原因だからな。ただな、太君」
太「はい」
天野「あまり変なことに首を突っ込むんじゃないぞ。ちょっと呪術の心得があるとはいえ、危険であることには変わりないからな」
太「はい、了解です！」
望月「もし興味があるなら、うちにも護身術くらいはあるから、身に付けておくといいわね。今よりはましになると思うわよ」
弓納「私は、体術くらいなら教えてあげられます」
望月「駄目よ小梅ちゃん。太君はそういうタイプじゃないわ」
太「む、これでも一応男ですよ」
望月「誰も女の子だなんて言っていないわ。貴方に合ったやり方があるだろうから、それを身に付けるのがいいと思うの。ま、それはおいおい教えるとして、先ずは貴方を歓迎しないとね」
弓納「そうですね」
天野「やれやれ」
望月「ようこそ、客士院へ。これからよろしくね」
太「はい、よろしくお願いします！！」
女「お疲れ様、小梅ちゃん。ちなみに全然遅れてないわよ」
女の子「そうですか。よかった。ところで……そちらの男の子は」
弓納と名乗った少女は太の方を見て首をかしげる。
女「そうね。ちょうどそれについて聞こうと思っていたところよ。天野君。早速で悪いのだけど、その子について説明してもらえないかしら」
天野「ああ、分かってるよ。事の次第を一部始終話そう」
女「ええ、よろしく頼むわよ」
―― しばらくして
天野「というわけだ」
女「なるほどね。大体の事情は分かったわ。そういうことなら、こっちの事情を話さないわけにはいかないわね」
天野「おい、いいのか」
女「構わないわよ。どうせこんな話知っても、宴会の余興話にしかならないから。それにもう彼も関わってしまったのだし、このまま忘れろだなんて無茶な話よ」
女性「と、その前に自己紹介くらいはしておきしょうか」
女「では改めて。コホン、私の名前は望月詠子。この神社で祭宮を務めている者よ。よろしくね」
女の子「弓納小梅と申します。現在、学校に通っております。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
太「……太です。よろしくお願いします」
望月「それじゃあ始めるわね。まず私達のことだけど、以前そこの天野君がお務めしていたように、確かに秘密のお仕事をやっているわ。君もこの前遭遇したような物の怪の類を調伏したり、彼らが原因で起きている騒ぎ、異界騒ぎを解決したりするのが仕事よ。で、そんなことをしている私達は"客士"って呼ばれているのだけど、ここはその寄り合い所。"客士院"というわ」
太「へえー。戦隊物みたい」
天野「戦隊物って、君なあ」
望月「ああでも、勘違いしないでね。別に妖異、妖怪とか妖魔とか物の怪とかその他諸々で呼ばれている連中は皆が皆悪さをするならず者じゃないの。人には害のないものも多いし、中には人を助けてくれるような奴だっているわ。いわば害獣と益獣ね」
太「なるほどですね。ちなみにこの仕事って自発的にやっているものですか」
望月「いいえ。依頼主からしっかりお金をもらってやっているわ」
太「依頼主ですか。一体誰が」
天野「国だ」
太「え、国？」
天野「そう意外そうな顔をするな。質の悪い妖怪を放置していると国の秩序が乱れてしまうからな。犯罪者と煩妖は昔から国の悩みの種というわけだ」
望月「主に国からの依頼ってだけで、それだけじゃないのだけどね。個人からの依頼も受けることもあるわ」
天野「もっともこのご時勢、ああいった連中を認識していてわざわざ依頼を出すような人間なんて少数だがな」
太「あの～、話の途中で申し訳ないのですが、"はんよう"ってなんでしょうか？」
望月「"煩妖"っていうのはね、物の怪の中でも、国や社会にとって害をなすような存在のことよ。早い話がお上にとっての害獣みたいなものね」
太「ほへー」
望月「どう？ 大体分かっていただけたかしら。天野君はもったいぶってたかもしれないけれど、特段そんなに変わったことをしているわけじゃないわ」
太「…………」
黙り込む太。何秒かの沈黙の後、望月が口を開く。
望月「ねえ、もしかして"客士院"に興味がある？」
太「え、そ、それはもちろんです！」
望月「そう、じゃあ話が早い」
彼女は何のためらいもなく、その言葉を口にした。
望月「うちに入る気はない？」
太・天野「えっ！？」
二人して素っ頓狂な声を上げる。
望月「冗談よ冗談」
太・天野「なんだ、冗談か」
望月「というのは冗談で」
太・天野「冗談じゃないのか！？」
望月「貴方達息ピッタリね。感心しちゃったわ。お笑い芸人になれそう」
弓納「お笑い芸人……」
望月「実際にお笑い芸人になれるかはともかくとして、ちょうど人手がいなくて困っていたのよね。ああ、もちろん危険なことをさせるつもりはないわ。もしよかったら」
太「やります！ 喜んで！」
望月「うふふ、交渉成立ね」
天野「おいおいおい、望月、正気か？」
望月「あら、私はいつだって正気よ。ねえ、小梅ちゃんはどうかしら？」
弓納「私はさしあたってなんの問題もないです」
望月「だって、天野君。大体、貴方が彼をここに連れてきたのよ。今更渋るなんてないんじゃない」
天野「……全く、なんで俺の周りはこんなにチャレンジ精神豊かな輩が多いんだ」
望月「あら、それって」
天野「分かったよ。元はといえば俺が連れてきたのが原因だからな。ただな、太君」
太「はい」
天野「あまり変なことに首を突っ込むんじゃないぞ。ちょっと呪術の心得があるとはいえ、危険であることには変わりないからな」
太「はい、了解です！」
望月「もし興味があるなら、うちにも護身術くらいはあるから、身に付けておくといいわね。今よりはましになると思うわよ」
弓納「私は、体術くらいなら教えてあげられます」
望月「駄目よ小梅ちゃん。太君はそういうタイプじゃないわ」
太「む、これでも一応男ですよ」
望月「誰も女の子だなんて言っていないわ。貴方に合ったやり方があるだろうから、それを身に付けるのがいいと思うの。ま、それはおいおい教えるとして、先ずは貴方を歓迎しないとね」
弓納「そうですね」
天野「やれやれ」
望月「ようこそ、客士院へ。これからよろしくね」
太「はい、よろしくお願いします！！」