プロローグ 第四章:異様

―― 資料室

太「ほー。中はこんな風になってる、と。ん?」
持っていた携帯端末で室内を照らすと、古文書や文献らしきものが展示されたショーケースの中に、どことなく目新しそうな絵巻物が安置されていた。
太「大國絵巻。なんか大層な名前が付いてるなー。まあいいや、こういう大層な書名はかえって大したものじゃないと相場が決まっている」
部屋中央奥の机の方に目を見やる。そこには、日誌のようなものが雑多なかんじで置かれていた。
太「日記?」
『旧波見校日記』と表記されたそれを、太はおもむろに開いた。

『○月×日。高良宏光。懐かしさのためにしばらくぶりに訪れてみると、おかしな気配がした。普段人の出入りが少ないから、もしかすると夜盗でも住み着いているのかもしれない。はじめはそう思っていた。だが、それは間違いであった』

『あれは、夜の住人であり、異界の住人だ。おそらくは人のいなくなったここを住処としたのだろう。私は小さい頃からよく不思議なものを見ていたが、あれは、それらと同じであり、また、異質なものでもあった。あれには触れてはいけない。そういう知識がほぼ皆無の私でも、それくらいは理解出来た。表向きは様々に取り繕っているが、この学舎を再活用出来ない本当の理由はここにある』

太「……これって、例の亡霊騒ぎのことかな」
彼の疑念は確信に変わっていく。と同時に、このまま長居するのは危険だという予感もしていた。
多分、自分ではどうにもならない。