プロローグ 第四章:異様

―― 小学校講堂前。

太「ハア、ハア。全然、話と違うじゃないか。何が、亡霊だよ。なんと、か、しないと」
しかし出口はなかった。
否、正確には塞がれていた。蜘蛛の化け物の仕業なのか、何か結界のようなものが張られて出ることが出来ない。
太(夜間にしか目撃されていないのが本当だとしたら、日が差す時間になれば。それまで、なんとか)
化物「グルルルルル」
太「!? いっ、いつの間に」
太(なんとか時間稼ぎを)
太「やっ!」
化物「……!?」
太の投げたものが化物の体躯にまとわり付く。
太「ど、どうだっ」
投げたのは"人紙"と呼ばれるもの。人型の紙を連ねたそれは、攻撃するというよりは相手にまとわりついて怯ませるためのもので、昔祖父から教わったまじない、護身術であった。
太(動きが止まった……? なんとかやり過ごせるかも)

パシン。

重みの感じられない物体が地面に叩きつけられた。
太「あっ、しまっ……っつう!」
逃げようとしたところに足元をすくわれ、為す術もなく転げ落ちる。
化物「グオオオオオォォォォ」
太「……ついてない。ここで終わり、か」
太は空を見上げる。いつの間にか雲に隠れていた満月が顔を覗かせていた。
太(月が綺麗だ。思わず吸い込まれてしまいそう)
可能なら、このまま月の都とやらに行ってみたいものだ、などと太は思った。

……

……あれ?

何も起きない。
おそるおそる化物の方を振り向く。
辺りをキョロキョロし、こちらへと進めていた歩を止めていた。
?「やれやれ。誰か入ってきていると思ったら、案の定だ」
化物「!?」
?「こっちだ」
太と化物は一斉に声のした方を向いた。